わざとやっているか、なにも考えてないのか。
ここのところ、医療制度改革、勤務医の負担軽減などでっかい風呂敷を広げつつ、中身はどうかというと、ホントにそんなことできんの?と言ったことが多い、厚生労働省。
今日の読売新聞の1面トップをみて驚いた。
受診、最初は「総合科」→専門医に橋渡し…医療効率化狙う
誰がやるんだこんなこと。何より人がいないし、どうやってそんな体制つくるんだ。自治医大のように、総合診療部ってのがあるところは比較的早く対応はできるだろうけど、もともと大学病院は人がいないって言われてんのに、誰がやるの。
医師が自由に看板を掲げられる内科、外科、皮膚科などの一般診療科とは区別し、総合科医を名乗るには、同省の審議会の資格審査や研修を受けたうえで、厚労相の許可を受けなければならない。国が技量にお墨付きを与えるこうした診療科は、これまで麻酔科しかなかった。
総合科をつくるだけならまだしも、またよけいな仕事を増やそうとしている。
あと、
能力の高い総合科医が増えれば、初診の患者が安心して総合科を訪れるようになり、「3時間待ちの3分診療」と言われた病院の混雑緩和にも役立つ。例えば、疲労を訴える高齢者が総合科を受診した場合、高血圧など基本的な症状の改善は同科で行い、心臓などに深刻な症状が見つかれば、速やかに専門医につなぐ仕組みを想定している。
初診の患者への対応の時間は大きな問題だけれども、それは各科各様で、初診外来を設けているところもあるくらいだし、深刻な症状がある場合はしかるべき科に紹介しているのは、よくある話ではないかな。全国の総合診療部のみなさん、初診外来の効果はどれくらいのもんでしょうか。
軽い膀胱炎だとか、症状の安定した前立腺肥大症とかみてくれるのかな。でも、大病院に来る必要がなければ、近所の開業医に紹介するよな、普通。
マスコミも、お役人の言うことを鵜呑みにして、「ウチは医療の読売だ、トップに持ってくるぞ!」と意気込んでいないで、この策に対して、各病院が対応しきれるか、冷静に分析できる目を持たなきゃダメだ。そのための大新聞でしょう。それだけの調査能力、分析力はある…のかなぁ?
ウチは読売だけど、チラシと「あたしンち」みるのがメインだもんなぁ。あんまりじっくりみてないや。
追記)今記事を読み直して思ったけど、
日本の医療現場はこれまで、日常の診療を行う診療所(開業医)と、24時間対応で入院と専門治療に当たる病院との役割分担があいまいだった。このため、胸の痛みやめまいなどを感じた患者が、どの医療機関にかかるか迷った末、大事を取って専門性の高い病院に集中。軽症患者から救急患者まで多数が押し寄せる病院では、医師の勤務状況が悪化し、勤務医の退職が相次ぐ一因にもなっていた。
大病院では、紹介状がない場合には、特定療養費*1としていくらかもらっていて、それを開業医との一応の区切りとしているんじゃなかったっけ。開業医ってのは、そういった患者も受け入れて、必要であればしかるべき医療機関に紹介する、そういうためにあるもんだし、そういった意味での役割分担ははっきりしているはず、と思っていた。
「役割分担があいまいだった」としているのはあくまで患者側で、その区別を周知徹底させるため、厚労省も啓蒙活動をやっているもんだと思っていたが、やってないよな、こんな調子だと。で、そのツケを病院に持っていくと。責任は全て病院にあると。そういうワケだな。マスコミもそういう意見なんだな。
これじゃあ紹介状がないと診ないって病院*2が出てくるのも当たり前だ。私が所属している大学病院も原則そうなんだけど、なぜか紹介状なしの初診患者が押し寄せている。
こんな行き当たりばったりの政策が大新聞の1面を飾るような扱いとなると、決まりです。日本の医療はおしまいです。これは決定事項です。
以下は記事。
受診、最初は「総合科」→専門医に橋渡し…医療効率化狙う
厚生労働省は、専門分野に偏らない総合的な診療能力のある医師を増やすため、新たな診療科として「総合科」を創設する方針を決めた。
能力のある医師を国が「総合科医」として認定する仕組みを整える。初期診療は総合科医が行い、必要に応じて専門の診療科に患者を振り分ける2段階方式を定着させることで、医療の効率化を図り、勤務医の労働環境の改善にもつなげる狙いがある。日本医師会にも協力を求め、5月にも具体策の検討に入り、早ければ来年度中にもスタートさせる。
総合科は、「熱がある」「動悸(どうき)や息切れがする」「血圧も高い」など一般的な症状の患者の訴えを聞き、適切に治療したり、専門医に振り分けたりする診療科を指す。同省では、開業医の多くが総合科医となり、いつでも連絡がつくかかりつけの医師として、地域医療を支える存在となることを期待している。
医師が自由に看板を掲げられる内科、外科、皮膚科などの一般診療科とは区別し、総合科医を名乗るには、同省の審議会の資格審査や研修を受けたうえで、厚労相の許可を受けなければならない。国が技量にお墨付きを与えるこうした診療科は、これまで麻酔科しかなかった。
日本の医療現場はこれまで、日常の診療を行う診療所(開業医)と、24時間対応で入院と専門治療に当たる病院との役割分担があいまいだった。このため、胸の痛みやめまいなどを感じた患者が、どの医療機関にかかるか迷った末、大事を取って専門性の高い病院に集中。軽症患者から救急患者まで多数が押し寄せる病院では、医師の勤務状況が悪化し、勤務医の退職が相次ぐ一因にもなっていた。
同省では、総合科導入を「医療提供体制を改革する切り札」と位置づけており、5月にも医道審議会の専門部会で議論に入る。将来的には、診療報酬上の点数を手厚くすることも視野に入れる。
能力の高い総合科医が増えれば、初診の患者が安心して総合科を訪れるようになり、「3時間待ちの3分診療」と言われた病院の混雑緩和にも役立つ。例えば、疲労を訴える高齢者が総合科を受診した場合、高血圧など基本的な症状の改善は同科で行い、心臓などに深刻な症状が見つかれば、速やかに専門医につなぐ仕組みを想定している。
厚労省とは別に、今月から「総合医制度」の具体的な検討に入っていた日本医師会(唐沢祥人会長)も、総合的な診療能力のある医師の養成で同省に協力していくことを確認。総合科の創設についても、「患者が求める方向であり、異論はない」(地域医療担当理事)としている。
2005年10月現在、全国の病院(病床数20床以上)の数は9026で、前年比0・6%減。一方、診療所(同20床未満)は9万7442で、前年比0・4%増となっている。
(2007年4月30日3時1分 読売新聞)