初めて知った「el-Net」。

 文科省がちっちゃい放送局を一つ作って、無駄なようだからつぶしちゃった、そんなところか。毎日jpより。

教育情報衛星ネット:廃止へ 番組魅力乏しく視聴者減少 文科省、40億円投入無駄に

 衛星通信を利用して生涯学習番組などを全国に発信する文部科学省の教育情報衛星通信ネットワーク(エル・ネット)が08年度、廃止されることが分かった。99年7月に始まり、少なくとも40億円以上が投入され、ピーク時には公民館や学校など2177カ所に受信設備が置かれた。しかし最近は「放映の際、視聴者がいない」と指摘されていた。インターネットの普及のほか、番組の魅力の乏しさやPR不足などが背景にあるとみられる。【高山純二】

教育情報衛星ネット:廃止へ 番組魅力乏しく視聴者減少 文科省、40億円投入無駄に

 正直なところ、全く知らなかった。
 民間の放送局が一つできて、10年持たずにつぶれるのとはワケが違う。税金使って公の放送局を作ってるのだから、つぶすのを前提ですすめていい話ではない。
 Wikipediaによれば、NHK衛星本放送が始まったのが1989年。WOWOWが始まったのが1991年。Yahoo!JAPANがサービスを開始したのが1996年。スカイパーフェクTVが登場したのが1998年。
 1999年に始まっているのであれば、衛星放送のノウハウが全くなかったとは言い難い時代であり、Yahoo!JAPANがすでに始まっていることを考えると、インターネットの普及について予想できなかったわけでもあるまい。
 Wikipedia、「エル・ネット」より。

エル・ネット(el-Net)とは、文部科学省が衛星放送を利用して全国に教育、文化、スポーツ、科学技術に関する情報を直接配信している教育情報衛星通信ネットワーク。生涯学習政策局の所管。1993年7月より稼動。受信局は、全国の社会教育施設、学校等約1500ヶ所で、送信局は、文部科学省の他、全国の教育センター等23ヶ所。一般家庭では受信できない。
(中略)
全国の教育委員会を窓口に、導入年次から3ヶ年を限度とした助成金で始めた。このため、3ヶ年経過後は、ほとんどの地方で維持経費や機器更新費用の予算確保ができないことから、取り止める自治体が続出している。

 「取り止める自治体が続出している」とある。
 それをわかっていながらズルズルと続けていたならば、税金の無駄遣い以外の何ものでもない。
 そもそも誰のための放送であったのか。
 再び記事より抜粋。

 設置から10年もたたずの廃止。文科省は「メンテナンス費用がかかる一方、インターネットの普及も進んだ。費用対効果から見て、役割は終えた」と説明する。「宝の持ち腐れ」との指摘については「工作教室などを放映した『子ども放送局』などかなり人気の高い番組もあった。また地方の人が著名人の講演を聞けるなど、一定の役割を果たしたと思っている」と話している。

 エル・ネットのFAQページによれば、受信には専用のチューナーを必要とするとのこと。そのため、一般家庭では視聴することができないのだろう。
 これだけテレビが普及している現代、誰が著名人の講演を放送している「テレビ」を見に、生の本人の声を聞くことができないのに、わざわざ外出すると考えるのか。
 また、新聞記事だから、文科省の担当者が実際にどう言ったかは定かではないが、廃止という扱いとなった以上、「役割は終えた」とは言えないだろう。もし一定の役割があったのならば、それを目標とした事業を最初から行なうべきで、それを終えてはじめて、「役割を終えた」言うことができるはず。そもそも、「役割」自体なかったのではないか。
 これだけのあからさまな無駄遣いが、未だに放置されているという好例を、何でもないように見えるニュースから知ることができた。
 探せばまだあるんだろうなぁ。
 以下は記事。

教育情報衛星ネット:廃止へ 番組魅力乏しく視聴者減少 文科省、40億円投入無駄に

 衛星通信を利用して生涯学習番組などを全国に発信する文部科学省の教育情報衛星通信ネットワーク(エル・ネット)が08年度、廃止されることが分かった。99年7月に始まり、少なくとも40億円以上が投入され、ピーク時には公民館や学校など2177カ所に受信設備が置かれた。しかし最近は「放映の際、視聴者がいない」と指摘されていた。インターネットの普及のほか、番組の魅力の乏しさやPR不足などが背景にあるとみられる。【高山純二】

 ◇設置10年もたたず

 エル・ネットは全国一律配信で、生涯学習振興の効果を高める目的で導入された。日本と外国の文化の違いを学ぶ番組のほか、文科省主催の各種会議やノーベル賞受賞者の講演会なども放送された。

 最盛期に35カ所あった送信局や受信局は、ここ数年、減少傾向にあり、現在は送信局23カ所、受信局約1500カ所。

 文科省によると、国立教育政策研究所が衛星通信の回線使用料(07年度は2億3000万円)を負担。送信局で3000万〜6000万円、受信局でパラボラアンテナ、パソコン、モニターなどに50万〜100万円の設置費用が必要で、少なくとも42億円はかかった計算になる。

 会計検査院の03年度決算検査報告では「(受信局で)番組の放映を全く行っていなかったり、放映の際に視聴者がいない」「放送スケジュールなどを受信するパソコンまたはプリンターが破棄されている」などと指摘され、有効活用を求められていた。

 設置から10年もたたずの廃止。文科省は「メンテナンス費用がかかる一方、インターネットの普及も進んだ。費用対効果から見て、役割は終えた」と説明する。「宝の持ち腐れ」との指摘については「工作教室などを放映した『子ども放送局』などかなり人気の高い番組もあった。また地方の人が著名人の講演を聞けるなど、一定の役割を果たしたと思っている」と話している。

毎日新聞 2008年1月29日 東京夕刊