言うは易し、行うは難し。

 今日は休みだから、自転車屋でも行こうかと思ったら、朝から雨ザーザーだ。おかげで子供をほっといてネット三昧。
 そんな中でm3.comで見つけた話題。
 毎日新聞が特にひどいんだけれども、大した検証、取材もせずに、言いたいことだけカッコつけて言って、あとは言いっ放し。現状の分析とか、その政策が実現可能かどうかとか、本来マスメディアが検証すべきことをひとつもやらずに、政府の発表だけ垂れ流す。
 世間ってのは、まだまだ情報の取捨選択に関しては未成熟で、「あるある」の件が良い例だけども、新聞・テレビの言うことを鵜呑みにして、医療サイドの意見を聞き入れないなんてのはよくあること。「メディア・リテラシー」が無いってヤツだ。
 マスコミはずるくて、その辺を利用して金儲けのネタにしている。よくあるブームなんてのは、たいがいマスメディアが仕掛け人だ。そういった意味では、特に広告業界がずるいとオレは思っている。
 で、話を戻すと、今日の毎日の社説「社説:在宅医療 往診する開業医を増やそう」は特にひどい。いわゆる「総合医」に関して。

…狙い通り実現すると、医療現場で起きている課題のいくつかは解決へ向かうかもしれない。
 大病院での「待ち時間数時間、診察数分」というばかげた事態はなくなる。勤務医や看護師は過重労働から解放され、医療ミスも減る。小児科や産科の医師不足も解消されそうだ。こんな良いことばかり思い描いてしまう。

 前にも書いたが、「総合医」ができることで、どういう理由で、勤務医や看護師の労働が軽減されるんだ。医師不足の解消へつながるんだ。それ以前に、「総合医」の話は具体化しているのか。
 こういったいい加減な記述だけならまだしも、

 成否のカギを握るのは、開業医である。ありていに言えば「もっと腕を磨き、もっと汗をかけ」というメッセージにどう応えてくれるかにかかっている。私たちが理想とする開業医とは、地域の人びとから信頼され、往診や夜間診療をいとわず、切り傷、風邪からがんの早期発見まで幅広く対応できる人だ。

 現場でがんばっている先生方に対して、「もっと勉強しろ、もっと働け」とは。医療の現場をさんざん引っかき回しておいて、なんという言い草だ。

 在宅重視への構造変革は日本医師会などの協力がなければ絵に描いたモチに終わる。厚労省も仕組みを号令するだけでなく、医療現場の声に耳を傾けるきめ細かい心配りが必要だ。政策官庁と現場の信頼が崩れると、迷惑をこうむるのは患者である。なるほど変わって良かったというシステムをみんなの力で築いていきたい。

 最後に厚労省にふって逃げているが、こんないい加減な文章で、その新聞社の主張である、社説でございとしてお金をもらえるのだから、マスコミっていい商売だなぁ、ってつくづく思う。
追記)

 もちろん、厚労省の狙いは金のかかる入院を減らし、在宅医療を促して総医療費を抑制することにある。でも、駅前のビルに診療所を構え、9時〜5時の時間帯で外来患者しか診ない医師よりも、往診に出向き、みとりを含め患者や家族の相談にのってくれる「かかりつけ医」がたくさん増えるのは歓迎だ。

 在宅介護可能な家族がどれだけいるか、また、「医療費抑制」を大命題としていることがどれだけ現在の医療に歪みを来しているのか、考えたことはないのか。検証もせず、「お役所がこういっている。」でいいのか。
 また、駅前診療所の医師を下に見るような書き方は問題だ。泌尿器科で言えば、軽微な膀胱炎、性行為感染症、症状の安定した前立腺肥大症など、小規模診療所で対応可能な疾患はいくらでもある。症状が悪化したときにしかるべきところに紹介してくれればいいだけの話で、駅前診療所でもしっかり機能すれば充分な戦力となる。駅前診療所はいらない、と言うニュアンスで書くことは失礼きわまりない。
 この程度の薄っぺらな知識だけでは、医療について語る資格などない。毎日だからこの程度なのかも知れないが。
 以下は記事。

社説:在宅医療 往診する開業医を増やそう
 来年度から医療構造が様変わりしそうだ。専門治療は大病院で行い、開業医(診療所)は「かかりつけ医」として24時間体制で患者を診る。厚生労働省がこの機能分担を進めようとしている。狙い通り実現すると、医療現場で起きている課題のいくつかは解決へ向かうかもしれない。
 大病院での「待ち時間数時間、診察数分」というばかげた事態はなくなる。勤務医や看護師は過重労働から解放され、医療ミスも減る。小児科や産科の医師不足も解消されそうだ。こんな良いことばかり思い描いてしまう。
 もちろん、厚労省の狙いは金のかかる入院を減らし、在宅医療を促して総医療費を抑制することにある。でも、駅前のビルに診療所を構え、9時〜5時の時間帯で外来患者しか診ない医師よりも、往診に出向き、みとりを含め患者や家族の相談にのってくれる「かかりつけ医」がたくさん増えるのは歓迎だ。高齢社会もそんな医師を求めている。
 厚労省は、この方向に誘導するための施策も用意している。24時間体制で往診に応じる開業医には診療報酬を手厚くし、外来だけに特化し往診に取り組まない医師の報酬は抑え込むことにしている。金だけでなく公的資格も与える。複数の疾患を持つ患者を一人で総合的に診察できる開業医を「総合医」として認定、技量、能力にお墨付きを与える。
 わが国の医学教育は臓器別専門医を養成してきた。今後、専門医が開業する場合、総合的な診察ができるように研修制度を設けたり、研修医段階から総合医の養成システムを構築するという。
 開業医は1次医療を担い、必要に応じて病院や老健施設を紹介する。大病院は開業医から紹介された人や急性期の患者を受け持つ。こうした「すみわけ」は何も目新しいことではないが、欧米に比べ日本は取り組みが遅れた。
 成否のカギを握るのは、開業医である。ありていに言えば「もっと腕を磨き、もっと汗をかけ」というメッセージにどう応えてくれるかにかかっている。私たちが理想とする開業医とは、地域の人びとから信頼され、往診や夜間診療をいとわず、切り傷、風邪からがんの早期発見まで幅広く対応できる人だ。
 患者側の意識変革も必要だ。ちょっと頭痛がするだけで大病院へ行きたがる傾向がある。原因がわからないので迷った末、診療科もそろい、24時間対応、専門性が高い病院を選んでしまう。病院が1次医療をしないとなれば、私たちは良い「かかりつけ医」を選ぶしかないのである。発想を切り替えなければならない。
 在宅重視への構造変革は日本医師会などの協力がなければ絵に描いたモチに終わる。厚労省も仕組みを号令するだけでなく、医療現場の声に耳を傾けるきめ細かい心配りが必要だ。政策官庁と現場の信頼が崩れると、迷惑をこうむるのは患者である。なるほど変わって良かったというシステムをみんなの力で築いていきたい。
毎日新聞 2007年5月6日 東京朝刊