医の現場 疲弊する勤務医 番外編

 昨日のエントリーにあげた、読売新聞の連載記事の番外編。まだWeb上に載ってないので、自分でテキストにしてしまいました、って実際はOCRソフトに頼ったのだけれども。
 えーっと、内容はというと、燃料満載です。
 当初はいい連載じゃないか、と思っていましたが、最後のシメにこれを持ってくるあたり、やっぱりわかってないじゃん読売、と思わせるに充分な内容となっております。
 では、いろいろ突っ込んでみましょう。

…一方、患者側からは医師の「プロ意識」について疑問の声が上がった。医学生の息子を持つ東京都の塾経営、木下茂樹さん(57)は「連載を読んで医療上の過失で医師が逮捕されたケースが4件しかないと知り、驚いた。過酷な勤務状況は分かるが、プロである以上、『精いっぱいやりました』ではすまないはず」と主張する。

 医師の逮捕、まだまだ少ないそうです。ジャンジャン逮捕してくれとの国民の声が載っております。で、プロならば、どんなに労働基準法を逸脱した労働をして疲弊しても、100%患者を救えなければダメだそうです。

 連載では、小児科や産婦人科医師不足にも触れたが、都内の女性(52)は「多額の税金を使って医師として社会に育てられているのに、困っている患者が多い診療科を選ばないのは疑間」と記した。

 やっぱりね。連載5回目(医の現場 疲弊する勤務医(5)開業医へ「逃げたい」)の中のこの文。

 日本私立医科大学協会によると、医師1人を育成するのに約1億円かかり、税金で賄う部分も少なくない。

 これが効いているんだよ。「少なくない」っていくらだよ。それをはっきり書かないから、税金たくさん使ってんのに、ってなる。これをミスリードというんだよ。

「月6回の当直程度で(大変だからと)医師をやめてしまうのか」「『ありがとう』の言葉がないからくじけそうになるというのは、ひ弱すぎる」などの声も目立った。

 えーっと、労働基準法を逸脱して働けと言うことと、「ありがとう」と言われなくても働け、と読売はおっしゃっています。

 医師からの提案もあった。「医師免許更新制度により国民の信頼を得る」「国立大を卒業した医師には診療科の選択に制限をつけ、不足がないよう定員枠を設けるべきだ」などの指摘のほか、「(国が計画する)『総合医』を支援し、夜間休日の診療を担う人材を育てよ」という意見もあった。

 えーっと、

「医師免許更新制度により国民の信頼を得る」
「国立大を卒業した医師には診療科の選択に制限をつけ、不足がないよう定員枠を設けるべきだ」
「(国が計画する)『総合医』を支援し、夜間休日の診療を担う人材を育てよ」

 えーっと、免許更新のために、患者さんそっちのけで勉強したり、試験受けに行ったり、もし試験がなくても、更新手続きに行ったりするために病院休んでいいですか?休診にしていいですか?
 憲法破ってまで強制をさせたいですか?
 具体的に話がまだまだ決まっていないことを推進したいですか?

…神奈川県の病院勤務医(36)は、専門分化された病院で患者がたらい回しされる現状や、すさんだ医師と患者の関係を嘆きつつ、こうつづった。「今必要なのは他者への思いやり。まず自分が、できることから実行していきたい」

 シメに「たらい回し」ですか。思いやりで現状を解決できますか。こんな美辞麗句で連載をしめようなんて、なんて考えが浅いんでしょうか。しょせんこの程度なんですな。医療の読売としても。
 マスコミってのはこの程度です。医療の現状を分析して世の中に報告することすらできない。結局この連載が言いたいことってなんでしょう。期待して損しました。
 以下は記事。
追記1)OCRソフトでわざわざテキストにしたけれど、ヨミダス文書館にあるじゃん、テキスト。さらに損した気分。
追記2)先ほど、Web上にあがっているのを確認しました。

医の現場 疲弊する勤務医 番外編
読者からの反響 信頼関係希薄に/プロ意識が欠如
 病院勤務医の労働環境の実態を追った連載「医の現場 疲弊する勤務医」に対し、多くの反響がメールやファクスで寄せられた。医師側からは、医師不足の解消や医療提供体制の改革を求める声が上がったほか、「不信感をむき出しにする患者が多くなった」との指摘も多かった。患者側からも「よい医師ばかりではない」などと手厳しい意見が相次いだが、一方で「(医師と患者の)相互理解を進めるべきだ」とする声もあった。
 「感謝という日本のよき伝統はもはや失われた」
 そう記し、患者との信頼関係が希薄になったと嘆くのは、40代の心臓外科医。高齢の患者の心臓手術を行い、手術後の容体にも特に間題はなかったが、帰宅した患者が数日後に突然死すると、医療ミスを疑う家族から何度も責められた。
 「治療に自信があっても『裁判を起こされるかも』と不安にかられる。こんな状況なら、開業医になって面倒な患者は病院に送りたいと思ってしまうのも当然」と医師はつづった。
 病院に勤務する50代の整形外科医も、救急外来の85歳の男性が帰宅後に急死したケースで、家族から訴訟を前提に怒りをぶつけられた体験を記した。「昔は家族からあれほど一方的に責められることはなかった」とこの医師は振り返る。一方、患者側からは医師の「プロ意識」について疑問の声が上がった。医学生の息子を持つ東京都の塾経営、木下茂樹さん〔57)は「連載を読んで医療上の過失で医師が逮捕されたケースが4件しかないと知り、驚いた。過酷な勤務状況は分かるが、プロである以上、『精いっぱいやりました』ではすまないはず」と主張する。
 連載では、小児科や産婦人科医師不足にも触れたが、都内の女性(52)は「多額の税金を使って医師として社会に育てられているのに、困っている患者が多い診療科を選ばないのは疑間」と記した。「月6回の当直程度で(大変だからと)医師をやめてしまうのか」「『ありがとう』の言葉がないからくじけそうになるというのは、ひ弱すぎる」などの声も目立った。
 医師からの提案もあった。「医師免許更新制度により国民の信頼を得る」「国立大を卒業した医師には診療科の選択に制限をつけ、不足がないよう定員枠を設けるべきだ」などの指摘のほか、「(国が計画する)『総合医』を支援し、夜間休日の診療を担う人材を育てよ」という意見もあった。「信頼関係を築く努力を、患者側も医療従事者側も怠ってきた。双方の怠慢だ」。札幌市の主婦(37)は今の医療不信の根をそう分析する。神奈川県の病院勤務医(36)は、専門分化された病院で患者がたらい回しされる現状や、すさんだ医師と患者の関係を嘆きつつ、こうつづった。「今必要なのは他者への思いやり。まず自分が、できることから実行していきたい」