読売は何を言わせたいのか。

 他のサイトでもいずれ取り上げるであろう、今日の読売新聞1面。山崎正和氏の「地球を読む」より、「プロを敬う社会に、職業の権威と責任/素人優位の風潮 根深く」
 話の流れとしては、タイトル通り、プロを敬う社会に、との呼びかけのように読めるのだが、プロの一例としてあげられた医師についての部分。この内容にはクビを傾げざるを得ない。
 防衛医療については「事なかれ主義」と表現し、Informed Concentを「責任放棄」と表現する。「患者さま」の表現を医療側の権威と責任感の放棄の証拠ととる。
 「素人」が「プロを敬」っているのであれば、医療全体がこんな状態にはならない。(追記)このことを踏まえたうえで、「プロを敬う社会に」と述べるのであれば筋は通るが、そんな記載もない(追記終わり)。医療の現状をわかっての内容とはとても思えず、断片的な知識を元に書き散らしているだけにしか見えない。警官と教育現場についてはプロを持ち上げているのに、医師、官僚については少なくとも持ち上げている部分はない。医師についてはむしろ貶めている。しかし、結びでは「プロを敬う社会に」。読売の意図が透けて見えるような記事だ。これを掲載するようでは読売のどんな医療記事にも説得力が見出せない。マスコミに期待をすること自体が間違いと言えるだろうが。
 Web上にはまだ無いので、テキスト起こししました。でも面倒なので、医師に関する部分と結びのみ。

(前略)
 だが現代社会の素人優位、専門性軽視の風潮は想像以上に根が深いように思われる。教師と同じく「先生」と呼ばれる医師についても、権威は地に墜ちないまでも、微妙に揺らぎかけている形跡がある。先進国で医療訴訟があいつぎ、病院不祥事の報道が氾濫するなかで、明らかに医師の士気と使命感は低下しているといわれる。きわどい症例の治療にあたって、冒険的な処置を試みるよりも、事なかれ主義に傾く医師が増えたと間いた。
 現代医療を象徴する「インフォームド・コンセント」(情報を受けた上で同意すること)にしても、ごく一部だが、医師の自己防衛に使われているのを感じることがある。治療法と予後の予想を伝えるのは親切だが、複数の治療法を示して、素人の患者に選ばせるような場合があるからである。どうやら医学界の全体が謙虚になったのはよいが、代わりに必要な権威と責任感を放棄し始めているという印象を覚える。その証拠に、病院の掲示板に「患者さま」という敬称がめだつと思うのは、素人のひがみだろうか。
(中略)
 だがどう考えても社会の倫理性を自然に高めるためには、人が職業人の誇りを抱き、結果として「恥を知ること」が第一である。そのさい、「高貴なる者の責任」は本人がまず自覚するのが当然だが、この自覚はその高貴さを社会が敬うことで支えられている。しかも現代のブロフェッショナルはその9割以上が、じつは誠実に任務に献身していると考えられる。ここはひとつマスコミも含めて、社会をあげて彼らの実像を讃え、一層の使命感へとおだてあげる道はないものだろうか。