医師の過労死。

 今話題になっているページ。産婦人科勤務医、なな先生の「ななのつぶやき」の「犠牲」。
 身近な医師が2人、過労で亡くなられた話。
 幸いにしてというべきか、私の周囲には過労で亡くなった例はない。聞いた話のみ。
 ひとりは、大学時代の同期の麻酔科医。心筋梗塞と聞いている。
 ひとりは、私が大学の分院で働いていたころ、小児外科のスタッフとして働いてた医師。少なくとも私よりは若い。本院に戻ってしばらくたったころその報を耳にした。飲み会の最中に急変したと聞いた。小児泌尿器で名のある先生の下についていた時期に少し接点があったので、若い彼がなぜ、と信じられなかった。
 最近、麻酔科医の自殺の報もあったが、過労死と自殺。根っこは同じだろう。
 大学病院では業務の細分化が全くなされていない。使えるものは医師でも使え、というか医師自身が便利屋にされてしまう。
 患者を手術室や処置室につれて行く際のベッドへの上げおろし、外来で処置の準備、点滴の針刺し、などなど、そんななかで仕事をこなそうとすれば、医師本来の業務以外に忙殺されてしまうこともしばしば。そりゃ帰りが21時以降になるのは当たり前だ。
 私は大学病院のころは、いろいろあって、精神的にまいってしまい、仕事を無断欠勤してしまった。当然医局はちょっとした騒ぎにはなったが、まだこういう行動に移せるだけいいのかもしれない。
 それが自死へとつながる場合もあるだろう。あるいは、仕事のつらさを感じていながら、それを言い出すことができずに、「大丈夫です」といい続け、一生懸命働いて体に知らぬ間に不調を来し、突然死へとつながる場合もあるだろう。
 「何を甘いことを言ってやがんだ」、
 「自分の職場ではそれくらいは当然」、
 「俺が若いころは…」とおっしゃる方もいるかもしれない。
 しかし、たまたま体がもってくれたのかもしれないし、同じ職場で悲しい結果となった方がいるかもしれない。
 今、自分は大学病院から離れて一人医長。仕事のペースは自分で決めることができる。その分責任は自分にかかってくるし、直接相談できるものがいないので、そういった面での不安はあるが、だいぶ楽にやらせてもらっている。もっとも、当直(という名の夜勤)はあるが。
 医療現場にいる立場として言わせてもらえば、現状が異常。特に大学病院。これでWHOに世界一といわれる日本の医療を支えてきたこと自体を褒め称えるべき。
 国はこれ以上の医療費抑制、効率化を求めているのだから、医療崩壊はもう既定路線。これ以上の犠牲を出さないためには、皆が自身の限界を見極めて、早々に退散するか、上司に訴えるかしないことには、改善は望めない。
 無理しないことだよ。