「当直」ってナニ?

 読売新聞で、「当直」違法状態として、エラク大々的に扱われている、当直について。
 医師の当直そのものの定義にまで言及している記事は、残念ながら今まであまり見たことがない。そういった意味では、読売のこの記事は大変画期的なことではないかと思う。
 読売はときどきこういうことをやるから侮れない。
 本文は僻地の産科医先生のところ、「産科医療のこれから」、「「当直」違法状態」に詳しい。
 「当直」の本来の定義と、実際医師がどのように働いているか、医療従事者以外は御存知ないと思われるので、図なんかつくってみちゃったりして簡単に解説してみる。
 まず、当直の定義。読売本文より。

…当直とは、夜間の宿直や休日の日直を指す。労働基準法などでは、「原則として診療を行わず、病室の定時巡回など軽度短時間の業務をする」ことを前提に、宿直は週1回日直は月1回を限度に労働基準監督署が許可する仕組みになっており、許可を受けた病院は、時間外手当などの割増賃金の支払いが免除される。
 突発的に緊急の診療行為を行った時は、割増賃金を払わなければならない。救急医療が頻繁に行われるような場合は本来、「当直」として扱うべきではなく、交代制の導入などが求められることになる。

 なんと(棒読み)、「当直」と称して対応している時間外外来、これはすべて「当直」ではない、ということになるわけだ。
 しかし実際は、交代制の導入をせずに、時間外外来を、しかも医師の扱いを「当直」として運営している医療機関がほとんどだろう。私がたびたび、「当直」とは記さずに、「当直(という名の夜勤)」と記しているのはそういうわけだ。
 さて、記事の内容については、僻地の産科医先生のところにお願いするとして、先ほど一生懸命につくった図をもとに、当直時間の解説を少々。
 まず通常業務が9時に始まるとする。それが終わるのが17時とする。
 当直(という名の夜勤;以下当直)がなければ、(1)で帰ることが出来る。
 当直の時間帯はその後、翌朝9時まで。その間、(「当直」としては診療義務はないのだが)時間外外来に患者が来るかもしれないし、来ないかもしれない。大学病院ならば、点滴が抜けた漏れたと呼び出しがあるやもしれない。当直の時間はこうして過ぎていく。
 で、夜が明け、本来ならば、(2)で帰れるはず。が、しかし、当直医師のほとんどは、ここから日勤に移る。当直明けの眠い目をこすりながら、あ、術中だとこすれないけど、手術をやったりもする。
 そして、日勤が17時までに終われば、(3)で帰れる。しかぁし、そんな私のような甘い医師ばかりではなく、ここから連続当直に入る先生方も、世間にはザラにいる。そういった先生方は、その後、(4)で帰れず、これが繰り返される…ということもある。
 看護師は交代勤務制をとっているので、少なくとも、このような形で1日以上連続勤務、なんてことはない。
 こういった勤務が全国で行われることで、日本の医療は支えられている…いや、崩壊進行中だから、えぇと、支えられていたわけだ。異常でしょ。
追記)あくまで1例。「こんなに早く帰れるわけねーじゃん」ってのはナシよ。
(2007年12月14日 0:39追記