やっぱり毎日なのか。

 今日はあまり呼ばれることがない。
 インターネットの普及に伴い、購読している新聞紙以外の記事に出会うことができ、しかも、どこの新聞がどんな性格を持っているのか、よりはっきりわかるようになってきた。また、地方紙やいわゆる4大新聞の地方版の記事に容易にあたることができるようになったのも、ネット普及によるメリットだ。
 先ほどネット上をうろうろしていて見つけた記事。ネタ元は、いつもおジャマしている、「ステトスコープ・チェロ・電鍵」より「毎日新聞、稲葉康生様」。
 毎日新聞の「From60」というコラムがある。東海地方限定のコラムなのだろうか。
 その2月24日付けの記事。
 医療に関しての記事をコラムとはいえ書くことができ、しかも前社会保障担当論説委員ならば、医療の現状を御存知ないはずはないのだが、医師に対して旧来のステレオタイプのイメージしか持ち合わせていないのではないか、と思わせるような内容。JA1NUT先生が突っ込みまくっているので、私はちょいと触れるのみとする。

稲葉康生の目 「医は算術」では困る /東海

 「医師会員の3分の1は欲張り村の村長」。25年もの間日本医師会(日医)の会長として君臨した故・武見太郎氏はこう嘆いたという。「医は算術」という風潮を根付かせてしまったところに、日本の医療の根本的な問題がある。医療制度の分かりにくさ、診療報酬決定に至る不透明さが、国民から不信をもたれている理由だ。

 いま、医療の仕組み、財政、そして医療機関や医師の不足、偏在など問題が山積している。政治家や厚生労働省の官僚だけでは、難局は乗り切れない。やはり医師が医療改革の中心にいなくてはならない。

 だが、現実はお寒い状況だ。日医は診療報酬引き上げに懸命となり、医療費抑制を図りたい官僚とのバトルが続いている。その舞台裏は国民不在そのもの。取材でこの光景を目の当たりにすると、医療改革の道険し、との思いをもってしまう。

 「医療の専門家でもないのに、口を出すな」。医師からこんな投書が何回も届いた。だが、専門家だけでやってきたことが、今の混迷を招いたのではないか。医療を国民に近づけるために、皆で意見を出すべきなのだ。(中部本社代表室長=前社会保障担当論説委員・57歳)

毎日新聞 2008年2月24日

稲葉康生の目 「医は算術」では困る /東海

 医療の現状そっちのけでお上の言う通りの記事を並べるのはマスコミの得意技だろうに。どの口が国民不在というのだか。
 skyteam先生の「東京日和@元勤務医の日々」より「産経を見習う・・・朝日・毎日・読売・にジャーナリストの資格はあるのか?」に医療の現状そっちのけでお上の主張通りの記事になってしまったいい例がある。御一読を。
 また、いまだに「医師=守銭奴」というイメージを持っているようだ。
 もちろん、ごく一部に金もうけに走るものもいるだろうが、たいがいは患者さんのためを思い、ちょっとでも良くなるように日夜努力をしている。それなのに医療費は削られる一方。その結果、損をするのは「患者さん=国民」であることをマスコミはしっかりと取材し、記事にすべきだ。
 2月17日付の同コラム。

稲葉康生の目 無料化の歴史から学ぶ /東海

 「老人医療費の無料化は失敗だった」。数年前、医療改革の論議が白熱化する中、厚生労働者の元幹部が漏らした。73年から実施された無料化は医療費増加をもたらし、国や地方自治体の財政を逼迫(ひっぱく)させ、83年に老人の一部負担が導入された。

 老人医療無料化は福祉国家・日本の理想の姿であった。高度成長によって経済活動が拡大する中で、無料化は老後の安心の暮らしを約束する施策だった。

 しかし、その結果何が起こったか。医療が受けやすくなり、診療所の待合室は高齢者であふれた。老人を検査漬けにして、多額の収入を得る医師も増えた。「医療はタダ」。高齢者に間違ったイメージを与えてしまったところに無料化が失敗した根源があった。

 医療は年金のような保険料の積立金がない。国や自治体と国民の医療保険負担でまかなわれている。高齢者ほど医療費がかかり、実際には現役世代が高齢者の医療を支える。

 無料化は理想だが、冷静に高齢化を分析すれば、別の施策があったはずだ。歴史に「もし」はないが、医療改革が必要な今、学ぶべきことは多い。(中部本社代表室長=前社会保障担当論説委員・57歳)

稲葉康生の目 無料化の歴史から学ぶ /東海

 ここでも「…多額の収入を得る医師も」と。どうも医師に対していいイメージを持っていないようだ。
 「無料化」が良い結果をもたらさないことはすでに言われている。小児医療の無料化しかり。
 1月27日付け。

稲葉康生の目 人任せにはできない /東海

 年金の次は医療制度について考えてみたい。日本人は健康への関心が高く、医療は年金と同じくらい身近な問題になっている。とはいえ、医療制度は難しく、国民の理解は十分ではない。最近は医師への信頼も揺らいでおり、医療の抱える問題は多い。

 日本は国民皆保険制度を取っており、だれでも保険証一枚で、安い診療代で診断が受けられる。皆保険により平等な医療が保障され、それが安心につながっている。

 しかし、医療にも少子高齢化の波が押し寄せている。診療、調剤費などを集計した国民医療費は05年度で33兆円、そのうち65歳以上が51%を使っている。高齢化によって医療費は毎年1兆円ずつ伸び、その一方、保険料収入は増えず、財政難を抱えており、医療制度の前途に暗雲が垂れこめている。

 医療の改革には痛みが伴う。国民に負担が回るのは避けられないのだから、もう官僚と政治家だけに任せてはおけない。ここでは国民のための医療改革を行うために、考える材料を提示してみたい。難しいけれど逃げないでほしい。(中部本社代表室長=前社会保障担当論説委員・57歳)

毎日新聞 2008年1月27日

稲葉康生の目 人任せにはできない /東海

 あんまり突っ込みどころがないので今日はココまで。