現場の声を聞いているのか、聞いていないのか。

 あるいは、(∩゚д゚)アーアー聞こえなーい状態じゃないか。今日の読売新聞より。
 診療科名38を26に、患者に分かりやすく…厚労省見直し(http://www.yomiuri.co.jp/national/news/20070520it01.htm
 以前の総合科のエントリーだったかな、同じことを書いたような気がするが、開業医ってのは、地方は特にそうだろうけども、いわゆる「何でも屋」になって、必要があれば、しかるべき病院に紹介する役割があって、紹介された大病院は、その患者が、症状が安定してきて、外来通院でも充分可能となれば、開業医に戻す。そんな役割分担があって当然と思っていた。

 例えば、花粉症の患者の場合、「アレルギー科」「耳鼻いんこう科」などのどれを選べばいいか現在は判断しにくい。また、「アレルギー科」を掲げていても、得意分野が、花粉症なのか、食品アレルギーなのか、皮膚症状なのか、看板だけでは判別できない。

 たとえば、花粉症で鼻が悪ければ、耳鼻科に行きゃいいし、目がかゆくてつらければ、眼科に行けばいい。両方あってつらければ、その時はかかった先生に相談すればいい。近くに無ければ、内科に相談するもいいでしょう。泌尿器科なのに点鼻薬・点眼薬がそろっていた開業医の先生もあったし、聞いてみればなんとかなるはず。
 それもできないのかな。最初っから総合病院に行けば混乱するのは当たり前で、そのために玄関に振り分けをする看護師がいるくらい。
 だから、完全なフリーアクセスには私は反対なんだけれども、今日の記事中で目に付いたのはこれ。

…一方で、初期診療を担当し、必要に応じて患者を専門医に振り分ける「総合科」や、「病理診断科(または臨床検査科と言い換え)」「救急科」の四つ(言い換え分を含む)を基本診療科として新設する。

 総合科はもう決定事項なのね。日本医師会は完全においてきぼりだね。
 以前のエントリーにもあげたけど、日本医師会は、総合科については反対している。日医白クマ通信にもしっかり掲載されている(http://www.med.or.jp/shirokuma/no652.html)。

日医白クマ通信 No.652
2007年5月15日(火)
定例記者会見
厚労省の総合科創設構想に反論―中川常任理事」
 厚生労働省が新たな診療科として『総合科』を創設する方針を固めたとの全国紙の報道があったことに対して、中川俊男常任理事は、5月9日、記者会見を行い、「日本の医療の最大の特徴であるフリーアクセスを制限する政策に繋がるものであり、認めることはできない」と断固反対していく姿勢を表明した。
 報道によれば、厚労省は新たな診療科として「総合科」を創設するとともに、能力のある医師を国が「総合科医」として認定、初期診療は「総合科医」が行い、将来的には総合科の診療報酬を手厚くする仕組みを考えていく方針だという。
 これに対して、同常任理事は、最新の医療情報を熟知し、必要があれば専門医に紹介し、心のケアまでできる総合的な能力を持った医師の必要性は日医も認識しており、このような医師を養成するために、会内の学術推進会議、生涯教育推進委員会で検討し、すでにその養成カリキュラム等の作成を開始していると説明。
 今回の厚労省の構想については、(1)審議会での議論も行わず、省内だけで検討されたものをあたかも決定したかのように唐突に出してきた、(2)初期診療は、「総合科医」が行うとしているが、これは患者さんのアクセスポイントを減少させるもので、地域格差を生じさせる、(3)国が「総合科医」を認定することは官僚の権益を拡大し、地域医療を国が管理統制するということにもなり、最終的には人頭払い制につながる恐れもある―など、その問題点を指摘した。
 そのうえで、同常任理事は、「今回の構想は医療費を抑制し、最終的には在宅主治医制度に結びつけようという厚労省の意図が見え隠れしている。総合的な能力を持った医師の必要性に限れば厚労省と意見が一致しているが、その他の点については同床異夢と言わざるを得ない」と厚労省の考えを批判。総合科を創設する必要はなく、むしろ総合的な能力を持った医師とはどのようなものであるべきか、社会保障審議会医療部会、医療施設体系のあり方に関する検討会等で十分な時間をかけて議論すべきとの考えを示した。
◆問い合わせ先:日本医師会広報課 TEL:03-3946-2121(代)

 これを読売ではひとつも報道していない。日本医師会が反対している案を厚労省が突っ走ってすすめて、それがあたかも決定事項のように報道していく。
 選挙前だからと実現するかどうかもわからない構想をぶち上げまくる政府与党もバカなら、現場と意見調整もせず話を進める厚労省もバカ。それをろくに検証せず垂れ流すマスコミもバカだ。新聞ってのは聞いたことをそのまま流せばいいのか?
 他新聞では報道されているのか?次のエントリーに。
 以下は読売の記事。

診療科名38を26に、患者に分かりやすく…厚労省見直し
 厚生労働省は、患者が医療機関を受診する際、自分の症状にどの診療科が当てはまるのかが現状では分かりにくいとして、診療科の表記の仕方を抜本的に見直す方針を固めた。
 38ある診療科を26の基本診療科に整理する一方、医師が治療を得意とする専門分野や病名などを、いくつでも併記できるようにすることで、診療科の表記に関する規制を事実上、大幅緩和する。
 21日の医道審議会診療科名標榜部会に同省案として提案し、早ければ年内にもスタートさせたい考えだ。
 医療機関が看板で掲げることのできる診療科名は、医療法に基づき、医科で34、歯科で4と定められている。診療科名は、時代とともに細分化されてきたが、基本的な診療科と専門性の高い診療科が混在し、「『内科』と『胃腸科』のどちらにかかればいいのかわからない」などの声が患者から出ていた。
 同省案では、「アレルギー科」「心療内科」など、すでにある専門的な16の診療科を、新たに位置づける基本診療科からはずす。一方で、初期診療を担当し、必要に応じて患者を専門医に振り分ける「総合科」や、「病理診断科(または臨床検査科と言い換え)」「救急科」の四つ(言い換え分を含む)を基本診療科として新設する。
 現在は、診療科をいくつ掲げても構わないが、改正後は医師1人につき二つまでしか掲げられなくなる。その一方で、治療が得意な「人工透析」「ペインクリニック(痛み緩和)」などの専門分野や、「糖尿病」「花粉症」などの病名を、小さな字か、かっこ内に書くなど、基本診療科名と区別する形でいくつでも表記できるようにする。
 例えば、花粉症の患者の場合、「アレルギー科」「耳鼻いんこう科」などのどれを選べばいいか現在は判断しにくい。また、「アレルギー科」を掲げていても、得意分野が、花粉症なのか、食品アレルギーなのか、皮膚症状なのか、看板だけでは判別できない。改正後は、基本診療科として残る「耳鼻いんこう科」などのうち、得意分野で花粉症を掲げる医療機関を選ぶことができるようになる。同省では、6月中にも標榜部会での審議を終え、医療法施行令などを改正する方針。
(2007年5月20日3時0分 読売新聞)