私も大淀病院産科医師を支持します〜同じ記者?

 下のエントリーの続きです。残りの2つの記事は中日新聞より。
 上・下に別れており、上は、本件のおおよその経過がほとんど。下が、これがちょっとあれなんだけども、本論からズレますけど、先に挙げた、北海道新聞の記事と同じような一節があります。あれですかね、同じ日の記事ですし、同じヒトが違う新聞に書いたんですかね。
 まず北海道新聞の一節。

 東京のある産科医は「産科医療行政をめぐる奈良県の怠慢が問題の根底にある」と指摘する。「低体重児や多胎など高リスクの出産を受け入れる総合周産期母子医療センターは不整備で、『隣の大阪府に頼っていればいい』とでも思っていたのではないか」と話す。

 で、これが中日新聞

 東京のある産科医は今回の事故について「担当医の対応に問題はあっただろうが、産科医療行政をめぐる奈良県の怠慢が問題の根底にある」と話す。「低体重児や多胎など高リスクの出産を受け入れる総合周産期母子医療センターは未整備。『隣の大阪府に頼っていればいい』とでも思っていたのではないか」

 こういうことって、よくあることなんでしょうか。
追記)念のため、今回の3つの記事を検索した結果のPDFファイルを、Yahoo!ココに置いておきます。
(2007年6月25日 23:20追記)
 で、

 晋輔さんは訴える。
 「奈良県の貧弱な産科医療態勢が実香が亡くなった背景にあることを含め、裁判を通じて、多くの人に真実を知ってほしい。そして考えてほしい。その結果、産科医療態勢が改善されて、同じ過ちを繰り返さないようになれば、実香も浮かばれる」

 今回の不幸な結果については、残念としか言いようがありませんが、裁判を起こすのであれば、訴える対象が間違っています。現在の医療体制をつくってきたのは、もとはと言えば国がやったこと。国を訴えるべきことです。そうしなければ、産科医療体制の改善なぞ実現できるはずもありません。このような訴訟が続く限りは、産科に限らず医療は崩壊を続けるのみです。
 で、これを蛇足という。

 デスクメモ
 二十年ほど前に母親が亡くなったときも病院の対応はひどかった。本気で木刀を持って殴り込んでやろうかと思ったが、止められた。そんな経験を持つ人は多いだろう。血が沸騰するほどの憤りを抑え、冷静に対処している医療事故被害者の方々は立派である。まず敬意を表し、そこから新聞作りを始めたい。(充)

 以下は記事。
 まず(上)から。

 こちら特報部 妊婦転送拒否19回の真実は 夫が医師らを提訴(上)
 当初ミス認めるも一転 病院側『どうぞ訴えて』
2007.06.04 朝刊 24頁 特報1面 (全1,432字) 
 奈良県大淀町の町立大淀病院で昨年八月に出産中だった妊婦が意識不明となり、十九の病院に受け入れを断られた末に死亡した問題で、妊婦の夫の高崎晋輔さん(25)らが、適切な治療を怠ったとして担当医(60)らを相手に損害賠償を求めて五月下旬、大阪地裁に提訴した。踏み切った背景には、十分な説明をしない病院、あらぬ中傷への怒りなどがある。「黙っていたら、同じ思いをする人が出てくる」と晋輔さんが心境を明かした。(鈴木伸幸)
 「将来この子に説明したくて」
 晋輔さんは九カ月の長男、奏太ちゃんをあやしながら話した。
 「一市民が提訴するには、ものすごい時間とエネルギーが必要。マスコミに出たことで、知らない人から『金が欲しいんだろう』などと批判されたし、できることなら提訴などしたくはなかった。だけど、どうして実香は死ななければならなかったのか、将来、この子に、きちんと説明しなければならない。病院に説明を求めても、十分な回答がない以上、残された方法はほかにありませんでした」
 亡くなった妻の実香さんの妊娠中の体調は良好だった。三十二歳での初産、妊娠四十一週目。実香さんは昨年八月七日午前九時ごろ、奈良県五條市の自宅から自分で車を運転し、約十五分かけて大淀病院に到着した。
 看護記録などによると、分娩(ぶんべん)誘発剤で陣痛が始まった。夕方から嘔吐(おうと)を繰り返し、容体が急変したのは翌八日午前零時すぎ。激しい頭痛を訴えて意識を失った。担当医は陣痛による失神と判断したという。
 だが、実香さんの意識は戻らず、容体は悪化しているように見え、晋輔さんは「何か異常があるのではないか。調べてほしい」と何度も訴えた。だが、病院は「漫然と経過観察を続けた」という。
 そのうち、実香さんの両手足が硬直しだし、脳内出血が疑われる症状が出たが、担当医は妊娠中毒症患者が分娩中にけいれんを起こす子癇(しかん)とみて、同一時半すぎに転院先を探し始めたという。奈良県内外の計十九の病院に「満床」などを理由に受け入れを断られ、最終的に約六十キロ離れた大阪府吹田市の国立循環器病センターに決まった。
 25年前生まれた夫も同じ担当医
 救急車で搬送され同六時ごろに同センターに到着。診断の結果、脳内出血が見つかり、脳と帝王切開の同時手術で奏太ちゃんを出産したが、実香さんは同月十六日に死亡した。
 晋輔さんら遺族は、大淀病院での対応に疑問を持ち、病院に説明を求めた。九月二十一日に説明があり、担当医は「ミスといわれればミスかもしれない」と話したという。だが、一番長く実香さんを診ていた助産師が同席しておらず、十分な説明はなかったことから遺族は再度の説明を求めた。ところが、二度目の面会で病院は態度を一変。話し合いの窓口を弁護士とし「病院にミスはありません。どうぞ訴えてください」とまでいわれた。
 その後、新聞の報道で「十九の病院に受け入れを断られていた」ということを知ったが、病院からはそういった説明もなかった。提訴後、原育史院長は「司法の場で明らかにする」とのコメントを出した。
 実は、二十五年前に晋輔さんが生まれたのも同じ大淀病院で、担当医も同じだった。親せきの間では「父子でお世話になるのか」と、無邪気に話したりしていたという。それが、こういう結果になってしまった。
 「転院を決めるまでに担当医が顔を見せたのは二度だけ。本当に全力を尽くした結果、こうなったのなら納得できるけど、そうとは思えない。真実を知りたい」と晋輔さんは言う。
中日新聞社

 こちらが問題の(下)。

 こちら特報部 妊婦転送拒否19回の真実は 夫が医師らを提訴(下)
 危険な出産の4割 県外へ 背景に奈良県の産科医療不備 現在、南部は専門病院ない異常事態
2007.06.04 朝刊 25頁 特報2面 (全1,448字) 
 大阪や和歌山を頼ればいい?
 東京のある産科医は今回の事故について「担当医の対応に問題はあっただろうが、産科医療行政をめぐる奈良県の怠慢が問題の根底にある」と話す。「低体重児や多胎など高リスクの出産を受け入れる総合周産期母子医療センターは未整備。『隣の大阪府に頼っていればいい』とでも思っていたのではないか」
 事故の舞台となった大淀病院は、奈良県南部の「南和医療圏」の中核病院だ。吉野郡と五條市にまたがる同医療圏の人口は約九万人。同県医務課によれば「年間の出生数は約六百五十に上る」。そんな医療圏で産科医のなり手がいないことから昨年四月に県立五條病院が産科診療を休診。今年四月には、今回の事故もあって大淀病院も休診してしまった。現在は同医療圏に産科病院はなく「妊婦は県中部か県境を越えて和歌山県の病院で出産している」(同県医務課)。
 事故当時、南和医療圏で唯一の産科病院だった大淀病院では、常勤医一人、非常勤医二人の態勢で年間に百五十人以上の妊婦を診察していたという。
 厚生労働省は二〇〇四年に総合周産期母子医療センターを中心とする周産期医療ネットワークの整備を〇八年三月までに完了するように全都道府県に求めていたが、事故当時、奈良県は全国で未整備の八県の一つ。関西では唯一の未整備県だった。
 新生児集中治療室(NICU)や母体・胎児集中治療室(MFICU)も県内に十分な数がなく、高リスクの出産では約四割近くの妊婦を一時間かけて県外に搬送するという、異常事態が放置されてきた。
 遅ればせながら、奈良県は県立医大付属病院(橿原市)に来年一月の総合周産期母子医療センター開設に向けて準備を始めた。二十一床あるNICUの後方ベッドを十床新設し、MFICUは三床増やし六床とし、その後方ベッド十二床を新設する。
 だが、前出の産科医は「付け焼き刃的で、本当に産科医療態勢を整えようとしているのか疑問。今後を見守る必要がある」と話している。
 ネットで中傷
 関係者の疑いも
 また、こうした医療行政が問われる一方、別の問題も問われている。医療従事者のモラルだ。医師専用のインターネットの掲示板に、昨年十月に新聞などでこの問題が報じられて以降、病院関係者でなければ知り得ない実香さんの妊娠の経過や、入院後に意識不明になるまでの状況や会話の内容などが書き込まれた。
 「妊娠したら健康な児(こ)が生まれて、なおかつ脳内出血を生じた母体も助かって当然、と思っているこの夫には、妻を妊娠させる資格はないッ!」といった、度を超えた中傷の投稿まであった。さらには、それに賛同する医師も多数いたとされる。
 晋輔さんの代理人石川寛俊弁護士は「病院は遺族への説明責任を果たさない一方で、病院関係者とみられる人物が情報を第三者に向けて漏えいしていて許しがたい」とコメント。奈良県警への告訴に向けて準備を進めている。
 晋輔さんは訴える。
 「奈良県の貧弱な産科医療態勢が実香が亡くなった背景にあることを含め、裁判を通じて、多くの人に真実を知ってほしい。そして考えてほしい。その結果、産科医療態勢が改善されて、同じ過ちを繰り返さないようになれば、実香も浮かばれる」
    ◇
 デスクメモ
 二十年ほど前に母親が亡くなったときも病院の対応はひどかった。本気で木刀を持って殴り込んでやろうかと思ったが、止められた。そんな経験を持つ人は多いだろう。血が沸騰するほどの憤りを抑え、冷静に対処している医療事故被害者の方々は立派である。まず敬意を表し、そこから新聞作りを始めたい。(充)
中日新聞社