コメントへのお返事。

 諸事情のため、更新もままならない状態にも関わらず、コメントありがとうございました。
 正直、こんな状態でコメントがつくなんて思ってもみませんでした。返事をコメントとして入れようかと思いましたが、長くなってしまったので、エントリーとしてあげます。
 Hardy-Hさんからいただいたコメントは以下の通り。

あえて苦言を言わせて貰う。
>今回の裁判においては、本来訴えられるべきではない担当医が矢面に立たされるため、そのご苦労は、想像以上のものと思います。
>遅ればせながら、私も大淀病院産科医師を支持します。
>残念ながら不幸な結果となってしまったこの件。損害賠償を認めてしまうとなれば、医療サイドの努力が水泡に帰してしまいます。
失礼だが、それはあまりにも遺族に対して失礼だと思う。
mosriteownerさん、あなたは医師だからそういう視点をいえるかもしれないが、自分としては大淀病院と言う”悪魔”に肩を持っているとしか思えない。
医者なら遺族のことを可哀そうに思うべきだし、そういう意見では結局、大淀の共犯としか思えない。
自分は高崎晋輔さん、無くなった妻の美香さんを心から支持する。

 大淀病院の件については、このような裁判という形になってしまった以上、この経過によっては、我が国の医療の現状をさらに悪化させる遠因となり得ます。その意味で、産科医師側を私は指示しました。
 今回の事例、医師側が適切な処置を行っていることは、各サイトでも検証されています。しかし、病院に入院しているのに、医師なのに、どうして救命できないのか、そういう疑問があるかもしれません。
 医師、病院もそれぞれ役割があります。その許容量、できる範囲を超えてしまえば、適切な医療機関に送ります。私も含めて、各医師は、どんなに不器用でも、その見極めだけはできるようになろうと、日々努力をしているはずです。
 今回、担当医師は他の医療機関に受け入れの可否について連絡しています。しかし19の医療機関に断られています。そしてやっと、国立循環器病センターに受け入れられましたが、残念な結果となりました。19もの医療機関に断られた現状、これは国や地方自治体が検討すべき課題です。
 今回の例が、たとえば早期に連絡していれば救命し得たか、それはわかりません。けれども、こうしたら助かったに違いない、医療ミスに違いない、という理由で裁判となる例が後を絶ちません。
 今の医師不足の遠因はここにもあります。
 こうしたら助かったに違いない、と思うことは簡単です。どんな医師でも、その場にたてば、ああでもないこうでもないと、あらゆる考えを巡らせなんとかしようとします。わざわざ悪いようにする医師はいません。みたこともありません。しかし、医療は100%ではありません。医学的に適切な処置、手続きをしたにもかかわらず、残念な結果となる例は少なからずあります。100%どんな例でも救命できる、そんなことを言う人がいたら、その人は立派な嘘つきです。
 今回の事例、誠に残念な結果と思います。最愛の伴侶をなくした高崎晋輔さんの心中は私にはわからないほど悔しい思いでいっぱいだと思います。どこに持っていきようもない怒りのぶつけどころを探したいともなるでしょう。つらいと思います。
 かわいそうに思うのも簡単です。ただ、忘れないでいただきたいのは、出産は命がけであるということ。母子ともに健康で経過した場合、それは当たり前ではなくて、恵まれた例であるということ。
 それと、これも重要なことですが、今回、この件に群がっているマスコミがいることを忘れないでください。今回の件、刑事事件としては、立件を断念されています。結局民事としての裁判となりましたが、それをたき付けたのはマスコミです。先のエントリーでも少しだけ触れています。
 私は、決してご遺族を批判しているのではありません。このような裁判が実際に進んでしまった以上、これ以上の悲劇を繰り返さないようにするには、産科を含めた医療の現状を改善に導くことが先決です。損害賠償を認めてしまえば、今産科に懸命に取り組んでいる先生方の気を削いでしまいます。
 また、この例に限らず、ただ医療批判をすればいい、理由を考えずに、ミスだミスだというだけ、センセーショナルな記事を求めるだけのマスコミがいる現状も医師不足医療崩壊の一因となっていることも考えなければなりません。
 かわいそうだからと無批判にご遺族側に立てばいいというだけの話ではありません。現代医療の現実とマスコミについて考えなければならない話です。