救急車事故+流産(死産?)の件、その後の報道。

 今日はニュースが多い日だ。
 奈良県の産科医療に大打撃を与えた毎日新聞がどうしてもオオゴトにしたいようで。
救急車事故:妊婦が流産 9施設が拒否、奈良・橿原から大阪・高槻に搬送中
ウェブ魚拓

…女性は119番から車中で約1時間半も受け入れ先が決まらず、橿原市から約41キロも離れた高槻市病院へ運ばれる途中だった。
(中略)
 大阪市内の産婦人科院長によると、破水の状況から、女性は切迫流産と見られる。(1)何らかの理由で胎児が死亡し、おなかの張りを訴えた(2)子宮が感染を起こし、それに伴って破水した(3)妊娠初期にかかわらず子宮口が開いてしまう「頸管(けいかん)無力症」による流産−−の3通りが考えられるという。早期に病院に運ばれていれば、(3)の場合は胎児を助けられた可能性があったという。

 こういう場合、推測記事は書かないほうがいいと思うがなぁ。搬送先の病院の医師からの発表ならばまだしも、大阪市内の先生の意見でしょ。おそらく、断片的な情報のみから、考えられること全てについて話をしたんだろうけど、そんな情報から、「助けられたかも」なんて書くべきじゃない。
 で、その「助けられたかも」ってのは、

…早期に病院に運ばれていれば、(3)の場合は胎児を助けられた可能性があったという。

 もっと早く搬送できれば助けられたかも、という意味ではなくて、妊娠初期の段階で対応できれば助けられたかも、という意味ではないのかな、と。古い教科書ひっぱり出して、頚管無力症の項を読んだだけなんだけどもね。
 で、

 女性は同日午前2時44分ごろ橿原市内のスーパーマーケットで買い物中、「下腹部が痛い」と訴え、同居の男性を介して119番通報した。奈良県の橿原消防署(中和広域消防組合)の救急隊員は同県立医科大に受け入れを要請したが、「手術中のため不可能」と回答された。このため、同消防署は大阪府内の産婦人科などに要請したがいずれも「処置中」などを理由に断られ、10施設目(連絡は延べ12回目)の高槻市の病院に決まったのは同4時19分だった。かかりつけの医者は、いなかったらしい。

 asahi.comウェブ魚拓)によれば、この妊婦さん、妊娠24週とのこと。にもかかわらず、かかりつけが無い上に、どの病院も確実に当直態勢に入っているような、丑三つ時に少し早い時刻に買い物に出かけている。無防備この上ない状態。
 ましてやあの奈良県での話で、この医師不足の御時世、妊娠がわかった時点で、対策を立てておかないとなにかあったときに困るのは自分なのだけれども…なにもしていなかったんでしょうな。
 こんな状況でなにかあった場合、真夜中に妊娠24週でしかも全くの初診の患者を受けるとこなんざぁそうは無いでしょう。これは、責められるは奈良県ばかりじゃないよ。
 あと、これ。面倒なんでリンクだけにしときますが、
奈良の搬送中流産:「同じ過ち、なぜ」 大淀の教訓生きず「医療機関充実していれば」
ウェブ魚拓
 毎日新聞は自らの行動がどのような結果を引き起こしたのか、未だにわかっていない様子。
追記毎日新聞の記事中、

 高槻市消防本部によると、女性は妊娠中期だったとみられる。

…とある。妊娠中期であれば5〜7ヶ月。asahi.comでは24週。
 このように報道によって妊娠時期があいまいであるため、タイトルに「死産?」を付け加えた。
(2007年8月30日 6:50追記
 以下は記事。
 MSN毎日インタラクティブ

救急車事故:妊婦が流産 9施設が拒否、奈良・橿原から大阪・高槻に搬送中
 ◇1時間半待機
 29日午前5時10分ごろ、大阪府高槻市富田丘町の国道171号交差点で、妊娠中の奈良県橿原市の女性(36)を搬送中の救急車と軽乗用車が出合い頭に接触した。搬送先の高槻市の高槻病院で、胎児の死亡が確認された。母体は無事。女性は119番から車中で約1時間半も受け入れ先が決まらず、橿原市から約41キロも離れた高槻市の病院へ運ばれる途中だった。妊婦の搬送を巡っては、昨年8月に奈良県の妊婦が転送先が見つからずに容体を悪化させて死亡し、救急体制の不備が浮き彫りになった。
 府警高槻署の調べでは、軽乗用車は大阪府茨木市の自営業の男性(51)が運転、この事故で他にけが人はなかった。同署は、事故と流産の関連を捜査している。
 女性は同日午前2時44分ごろ、橿原市内のスーパーマーケットで買い物中、「下腹部が痛い」と訴え、同居の男性を介して119番通報した。奈良県の橿原消防署(中和広域消防組合)の救急隊員は同県立医科大に受け入れを要請したが、「手術中のため不可能」と回答された。このため、同消防署は大阪府内の産婦人科などに要請したがいずれも「処置中」などを理由に断られ、10施設目(連絡は延べ12回目)の高槻市の病院に決まったのは同4時19分だった。かかりつけの医者は、いなかったらしい。
 高槻市消防本部によると、女性は妊娠中期だったとみられる。
 橿原消防署などによると、女性は搬送中の午前5時ごろ、救急車内で破水を起こし、その約10分後に事故に巻き込まれた。病院に着いたのは、通報から約3時間後の同5時46分だった。
 同消防署予防課は「事故による容体の変化は見られなかった。流産との関連は警察の捜査に委ねたい」と話している。
 大阪市内の産婦人科院長によると、破水の状況から、女性は切迫流産と見られる。(1)何らかの理由で胎児が死亡し、おなかの張りを訴えた(2)子宮が感染を起こし、それに伴って破水した(3)妊娠初期にかかわらず子宮口が開いてしまう「頸管(けいかん)無力症」による流産−−の3通りが考えられるという。早期に病院に運ばれていれば、(3)の場合は胎児を助けられた可能性があったという。
 昨年8月、奈良県大淀町大淀病院で、分娩(ぶんべん)中に意識不明になった妊婦が転送を同県と大阪府内の19病院に断られた末、約60キロ離れた国立循環器病センター(大阪府吹田市)に運ばれ、約1週間後に死亡した。これを受け、国は今年度中に、総合周産期母子医療センターを整備することとしていたが、奈良県など4県で困難な状況に陥っている。
 奈良県では、緊急に高度な治療を要する妊婦を県外の病院に転送する比率が、04年で約37%に上り、全国最悪のレベルだった。奈良県は未整備だった「総合周産期母子医療センター」を来年5月に設置。母体や新生児の救急搬送に対応する予定だった。
毎日新聞 2007年8月29日 大阪夕刊

 asahi.com

奈良県立医大、医師「断ったつもりなかった」 妊婦流産
2007年08月29日
 奈良県橿原市の妊娠24週の女性(38)が、奈良・大阪両府県の病院に相次いで受け入れを拒まれ、救急搬送中に胎児を流産した問題で、最初に受け入れを求められた同市の奈良県立医大病院の産婦人科には空きベッドがあったことが29日、分かった。別の妊婦の診察中だった当直医が「後にしてほしい」と答えたのを、事務担当者が受け入れ拒否と受け止め、救急隊に回答したという。
 また、高槻署や中和広域消防組合(橿原市)などによると、女性は搬送中の交通事故の約3分前に破水。胎児は女児で、すでに死亡した状態だった。破水前までに9病院、最終的に搬送されるまで計11病院から受け入れを断られていた。
 県などによると、県立医大病院の産婦人科には、28日夜から29日朝にかけてベテランと若手の2人の当直医がいた。同組合から同病院産婦人科に受け入れ要請があったのは29日午前2時55分。直前に、同病院で診察を受けていた女性が陣痛のために来院し、当直医の1人が対応しており、もう1人は、別の患者の手術後の経過を診ていた。
 救急からの要請を受けた事務担当者は当直医に報告。担当者は「診察中なので後にしてほしい」と回答されたため、救急に対して「お産の患者が入り、オペになるかもしれない」と答えた。
 しかし、県の聞き取りに対し、当直医は「断ったつもりではなかった」と話したという。
 この時点で、産科のベッドは1床空いていた。約40分後に同病院に通っていた別の女性が破水して入院。さらに午前5時半には、近くのクリニックから依頼された大量出血の患者を別病棟で受け入れた。
 同病院には来年度、ハイリスクの妊婦や新生児を対象にした総合周産期母子医療センターが開設される予定。